博士と渚くん
「ずるっ! 渚くんずるい!」

「何の話ー?」

穏やかな表情で食事を続ける渚くんに、どんどん怒りが湧いてきた。

「渚くんなんてもう知らないし! バカバーカ!」

私がそっぽ向く。すると渚くんは私の肩に手を回してきた。

「ごめんね博士」

「ふーんだ」

「プリンかなんか買ってきてあげるから、ね? 機嫌直して?」

「……プリンくれるなら」

そっぽ向けていた顔で渚くんを見た。
首を回すと、渚くんに頬を掴まれる。

「本当単純明快、わかりやすいなぁ」

「本人を前に言うことかな、それ」

唇を尖らせる。渚くんの指がそんな私の唇を挟んだ。

「ふふふー。よし、行ってくるね」

「んんん!」

早く離せといわんばかりに渚くんの手を叩く。涼しい顔で攻撃を受け止める様子にも腹が立つ。

てか謝罪の意でプリンを買いに行くはずなのに、なんで私の唇を挟んでいるのか。痛い。



何かに満足したのか、やっと手を離してもらえた私の唇はジンジンして仕方なかった。
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