博士と渚くん
「だ…」

「だ?」

「だれか、たすけ……」

震えながら発する声は誰にも届かない。
多分、隣にいるこの人にしか聞こえないほどの小ささ。

「本当にお母さんそっくりだね。その言い方も、泣きそうな顔も」

何でこの人はここまで覚えてるのに、私が嫌がっていたと考えないんだろう。
愛なんてあるわけないし。

「君もお母さんみたいに育つのかな? そうすれば大槻唯を俺の物にできるんだよな」

「……」

「それに最愛の子どもを失うことは、大槻唯にとっても宮地にとっても、最高に不幸だよな。俺を裏切った罰だよな」

肩に回されていた手に力が込められる。痛い。

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