博士と渚くん
私が高校生だった時、ストーカーはまだストーカーじゃなかった。
高校卒業したくらいから誰かに後をつけられたり、勝手にゴミがなくなっていたり、知らない人から電話や手紙がくるようになった。
それが続いたけど、気持ち悪いだけだから放置してたってのがきっと間違い。
大学に通って二年目の秋だったかな。
夜、家に帰る道でストーカーに襲われた。
その時は大学の教授…渚くんのお兄さんなんだけど、その人がたまたま来てくれたからちょっと脱がされた程度で済んだ。
私はこの時、誰がストーカーだったのかに気付いた。
だけど高校時代、私を気にかけてくれた先生だったってことがあって、誰にも正体を言わなかった。
それからだ。
家から一歩も出れなくなったのは。
あの時の恐怖が蘇ってしまう。