博士と渚くん
「何でお前がせぇへんねん!」

「普通に考えて嫌でしょ。
よかったね、相手はちゃんとした女の子だよ」

女の子と呼ぶに相応しくない年齢だと思うけど。

「だから嫌やねん!」

「うっさいなぁ。俺は君とラブシーンなんてしたくないの。また変な噂広まるとかマジごめんだし」

……ん?
渚くんが新田くんとラブシーン?

つまり、渚くんが村娘役候補だったってこと?

私は渚くんの代わりに出ることになったと、そういうわけか。

「私も渚くんのお姫様役見たいな。絶対可愛い」

ね、と新田くんに同意を求める。
渚くんを村娘役にすれば、私は晴れて用済み。帰れるわけだ。

「あ…お……ぅ」

新田くんは私と目を合わせるなり、顔を真っ赤にして、意味のわからない言葉を吐いてから走り去った。

……どういうこと?

「新田くん、見た目はいいくせに、女子苦手らしくてさ。色気皆無の博士ならいけると思ったんだけどなぁ」

「え、聞き捨てならない」

「でもそれも博士のいいところだよ」

幼児体型であることを長所として受け止めることは無理だ。
私にはそんなポジティブさはない。

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