博士と渚くん
「大槻さん、その格好、その、か、かわ、ええな」

「え? ああ、ありがとう」

顔を真っ赤にしてまで褒めてくれなくても。
新田くんはいい子なんだろうな。

どうしても保護者のような目線になるのは、私の実年齢のせいだろう。

「新田くんも似合ってるよ」

「せ、せやろか」

褒め返すと、新田くんは戸惑いながらも嬉しそうに笑った。

今思い返すと、最初はこんな表情一切してくれなかったなぁ。
私を見つけるなり、一瞬睨んでから立ち去ってた。
嫌われていると思ってたけど、ただ女性が苦手なだけだと知り、親近感が湧いたものだ。

「来週だね、本番」

忙しくも充実した毎日。学生に戻ったようだった。

だけどそれももうお終いなんだなぁとしみじみする。

「あの、俺……」

「ん?」

「いや、何でもないわ。
そや。文化祭の後の打ち上げ、博士もこーへん?」

「打ち上げか。考えとく」

勢いよく教室のドアが開く。
そこにいたのは大勢の生徒達。どうしたのだろう。

「新田!」

女子の一部と男子は新田くんを外に連行した。

何が何だかわからない。
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