後ろの姉
その日の夜 - 10分経過
一瞬、耳を疑った。
でも私の口は何故か、好奇心旺盛な姿を、見せようとするのだ。

「え、まじで!?本当に!?」

父の肯定の相槌。
冗談ではない語気。

「えー!すげえ!」

すげえを連発する私。これでも19歳だ。
でも父はそれに合わせるように、いつもと同じ口調で、話し始める。

「お父さんは今のお母さんと結婚する前に、一度結婚しているんだ。
そして結婚してすぐ、子供が出来た。それで生まれたのが、お前の姉だよ。」

実感が湧かない。

「お前のお姉さんが生まれたあとにね、その人とは別れたんだよ。
その人はその後しばらくして、亡くなったらしいが。
お前のお姉さんは、今でも生きているよ。
それで、そのたい焼き屋さんにいるってわけだ。」


ああ、そうか。
だから父は、そこには行くなと。

「俺達は後腐れなく別れた。
でもな、お姉さんのところではあんまり気分はよくないかもしれない。
だから、行くなよ。あそこには。」

「うん、分かった!」
私は嬉々として答えるのだ。

一人っ子で育った私にとって、兄弟という存在なんて、
友人の苦労話で聞く程度の他人事だった。
そんな私に、姉がいるのだ。

姉が、いるのだ。
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