君と指切り〜桜

「先生!桜が見たい」

「退院したら、行けるだろ?」

「やだ、桜が散っちゃうよ私、先生と一緒に見たいんだ」


相田は必死な顔で訴えてきた。


「相田!?」


「私、桜の花や先生の顔を憶えておきたいんだ…ここで」

そう言って相田は心臓の辺りを指差した。


「何を言ってるんだ」




「大樹に聞いたでしょ?
一度でも忘れてしまったら何もかも忘れていくんだよ今しか無いんだよ最後のお願い」


励ます言葉や
気の訊いた言葉が見つからなかった。



「私、桜を見たら元気になれる気がする」


「相田」


「少しで良いから」


もし、本当にそうなら…

すぐにでも、あの桜並木の道を君と歩く
君の笑顔を見ていたいから。



「外出はダメだ…屋上から見れないかな?」


相田は少し笑顔になった。



「行って見ようよ」


「そうだな」



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