君と指切り〜桜
桜の木の下で
《奈都芽side》
桜並木の道を先生の車で 通り抜ける。
何故だかわからないけど 一緒に桜が見たかった。
「先生!あの…一緒に歩きませんか?」
「えっ!?今?」
突然の申し出に少し驚いてバックミラー越しに私の表情を確かめているようだった。
「一緒に桜が見たいです…ダメですか?」
「…今日は帰りなさい、お婆ちゃんが心配して待ってるぞ」
思った通りの答え。
「…はい」
なぜ誘ったんだろう。
返される言葉はわかりきっていた。
わかっていても私はなぜか悲しくなった。
窓の景色を見るのを止めて背もたれに沈んで俯いた。