雨音で奏でて…二人きりの世界
拓真side

密に過ごした俺の誕生日までの

毎日が嘘のように忙しくなり

大切なメリとの時間が

ほぼゼロ…

毎晩の接待と休日返上のゴルフコンペ

家に着く頃にはボロ雑巾のように

くたくたで…言い訳だけど

仕事以外のことを考える余裕は無い

部長をはじめ芽里さんの仲間たちから

何度目かのお叱りを受けた…

どんなに忙しくても

俺を気遣ってくれる芽里の弁当…

申し訳ないと思っていても

行動で示すことができなかった俺

何個めかの営業相手が言った

「大切なものはいとも簡単に
手の中から消えてしまうものです」

その言葉が…俺の頭の中で何度も
くり返される



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