いろはにほへと
そんなわけで、かなり無理矢理俺は居座ることに成功した。
名前すら知らない女の子、ごめんね。
しかもホントにここに一人暮らしなんて。
後から考えれば、尋常じゃない程、追い詰められてたみたいで。
正常な判断は俺にはできなくて。
たださ。
俺だって普通の人間なんだよ。
ちっぽけなただの男なんだよ。
好きなように音楽を作って、
好きなように歌った。
あの頃に戻りたいと思う時だってあるんだよ。
だから、俺を知らないっていう彼女に出逢えたことは。
俺にとって、制限時間付きの自由みたいで。
世間の言うような虚像じゃなくて、ちっぽけな自分で許される空間みたいで。
少なからず、救いだったんだ。