いろはにほへと

「花が咲くと信じて待っててくれる人が居るから、花は応えるんですよ。」




まさか、真剣に考えてくれるなんて思っても見なかった俺は、ひなのからの返答に驚く。




「-え?」




ひなのの方を見上げれば、藤の樹の隙間から射し込む日光が眩しい。





「この藤は、もう時期は過ぎてしまいましたけど、こうして手入れをしてやれば、一ヵ月後、私が帰る頃に花を咲かせてくれます。狂い咲き、ですけど。」





そうすれば、次の時期に咲く花は美しいと保証されるのだとひなのは言った。






「花は散っても、また、咲くんです。」





この言葉が、実はすごく心に響いて。




泣きそうになったって言ったら、ひなのは信じてくれるかな。




だってさ。





花は散ったら終わりだって、ずっと思ってたんだよ。






そう言い聞かせて、枯れないように散らないようにやってきたんだよ。



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