いろはにほへと
予想外な展開は更に続く。
「…この曲、すっ、好きなんです。」
おずおずと言ったひなのの声が裏返る。
さすがにドキっとした。
―好き?
この曲が?
ちょっと待て。
ひなのは俺の顔を知らないんだよな?
けど、曲だけは知ってるのか?
昨日ここに来た時も、この曲が流れていた。
「…ふーん。。。」
ひなのは、この曲のどこを気に入ってくれたんだろう。
俺は外した軍手を、もう一回嵌め直した。
「この曲の、どこが好きなの?」
何気なさを装ってはみたが、なんだかすごく緊張する。
「え―?」
ひなのが振り返ったのがわかるけど、顔を見ることが出来ない。
「…さっき、好きって言ったじゃん…どこらへんが好きなの。」
やばい。
恥ずかしい。
それからやっぱり。
緊張する。
俺は俯いたまま、草をぐじぐじと引っ張った。