いろはにほへと
ひなのは暫く考えた後で。
なんと昨日初めて聴いたと言った。
「え!?」
「え!?」
思わず顔を上げてひなのを見ると、何故かひなのも同じ顔して俺を見る。
「あ、いや、、、なんでもない…」
慌てて取り繕うが、かなり動揺していた。
だってさ。
初めて昨日聴いたばっかり、なんて。
それで好きとか。
嘘だろ、と。
まだ、そこまでの段階じゃないだろ普通。
「?…えっと、、曲…、もですけど…声が好きです。」
けど、まんざらでもない。
この曲、作ったの俺。
歌ってるのも俺。
そんな俺に気付くことなく、ひなのは尚も続けた。
「ただ、歌詞が―」
え。
歌詞の意味がわからないと言ったひなのに、浮かれていた俺は一瞬言葉を失った。
会えない人を待つ恋人の気持ちがわからないという。
ひなのは元から人と接するのを避けているきらいがあるが、まさか、、誰かを好きになったことさえ、無いなんて。