いろはにほへと
「だったら、、、あの人の所に行けば良いじゃないですか。」




くしゃりと悲痛な面持ちになったひなのに俺は目を見開く。




「ひなの?」




「…わざわざ、ここに隠れてる必要ないじゃないですか。私もこの家も、貴方と関係ないんですから、巻き込まないで下さい。」






ひなのは早口で捲くし立てるとくるりと俺に背を向けた。





これって。。



理不尽にも俺は少し口元が緩んでしまう。






「-もしかして…ヤキモチ?」





一瞬沈黙した後。




「自惚れないでくださいっ!!!!」





ひなのが怒鳴って、屋敷の奥へと走り去る。






珍しい彼女の背中を見つめながら。





―これが昨日だったら、間違いなく追いかけて抱き締めてたな。





と思った。





―頭、冷やすか。





ひなのが宛がってくれた離れにある部屋までいって、長いこと使ってなかったスマホを充電しながら、馴染みの番号を探す。




ワンコールで出た相手からは、ほっとしたような反応があった。






「俺。色々申し訳なかったですけど、好きにさせてくれてありがと。明日帰るから迎え宜しく。あと…受けるよ、主題歌。けど、新曲にするから。」





もう、夢みたいな生活は終わり。

目を覚ます時間が来た。
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