いろはにほへと
「へぇ!中条さんルーチェ好きなの?聴くの?」
「あ、う、少し…」
澤田が明らかに生き生きとしてきた。
「なんだぁ!じゃ言ってよ!私持ってるよ。今日発売のやつ」
そう言うと、澤田は鞄の中から、今朝広げていた雑誌を掴んで私に見せた。
すごい、見たかったやつ。
あんなに一日言えなかったというのに、こんなに簡単に手に入ってしまった。
「見ても…?」
「勿論!」
ドキドキする胸を押さえ、澤田の厚意に甘えて雑誌を手にした。
表紙を見た瞬間。
心臓が鷲掴みされたみたいにぎゅっとなった。
赤茶けた髪。
琥珀みたいな色の目。
この夏確かに一緒に過ごしたひとだった。
トモハルだ。
トモハルが、居た。