いろはにほへと
「かっこいいよねぇ、ハル!えっとねぇ、こっちに確かインタビューが…」
澤田は隣から覗き込むと、にゅっと手を伸ばし、パラパラと捲る。
「って、え?!」
折角の雑誌に、パタリとついた染みを見て、澤田が驚きの声を上げた。
「やだ、中条さん、泣いてるの?そんなに嬉しかったの?」
澤田がおろおろしだすのが、申し訳ないけれど。
私の涙は止まってくれなかった。
本当、だったんだ。
トモハルが。
ルーチェのハル、だったのは。
そしたら。
全部。
全部。
過ごした日々が。
本当に、夢だった気がして。
こんな手の届かない人に、恋をしてしまった自分が滑稽で。
もう二度と会えないと再確認してしまったようで。
涙が、止まらなかった。