いろはにほへと
もう、会えないんだろうか?
もう、私のことなんて、忘れてしまっただろうか。
さよならの準備もさせてくれないまま。
あんなことを自分が言わなきゃ良かった。
あんな風に怒らなければ良かった。
あんなことで。
そしたら、まだ次の日も、その次の日も、トモハルは居ただろうか。
私が屋敷を後にする時までは一緒に過ごせたんだろうか。
今となっては、もう変わりようのない事実。
抱き締めてくれたのに。
私は私のままでいいよって言ってくれたのに。
その次の日に、さよなら、なんて。
トモハルにとったら、私とさよならすること自体、大したことではないのかもしれないけれど。
逃げていた理由を、訊ねなかったことが、悔やまれる。
トモハル。
元の場所へ戻って、もう大丈夫なの?
悪い人には捕まらなかった?
私のこと、覚えていてくれてる?
少しは、思い出してくれてる?
友達ですらない、私の、こと。
この夏の逃亡劇は。
ルーチェのハルのただの気紛れだったのかな。
トモハルは偽者だったのかな。