いろはにほへと
その時、だった。
「何やってるの!」
私のすぐ後ろから、少しの呆れと怒りが籠もった、馴染みの声がした。
振り下ろされたバットが、トモハルに触れるか触れないかの所で、ピタリと止まる。
弾かれたように振り返ると、廊下に青柳さんが仁王立ちして、ご主人を睨みつけていた。
「ふ、不法侵入だ!正当防衛だ!」
慌てたようにご主人は言うけれど、その顔にはしっかりと『しまった』と書いてある。
「馬鹿言ってんじゃないよ!どう見たって格下相手で、しかも武器もなく座り込んでいる状態じゃないの!犯罪者になりたいの!?」
ふくよかな体系の青柳さんは、廊下から出てきて、つっかけを履き庭に下りると、ドスドスと音をたてながら、停止したご主人の首根っこを掴んだ。
青柳さんとは反対に、痩せ型のご主人は、猫に捕らえられたねずみのように見える。
「全く!ひなのちゃんも居るっていうのに、ごめんなさいねぇ!どう考えたって、ひなのちゃんのお友達なのにねぇ!?」
青柳さんが、トモハルを振り返って言うのを聞きながら。
完全に人攫(さら)いのようなあの状況で、果たして友達と見えたかどうか―、こっそりご主人に同情した。
「あ、いや…」
トモハルもやっとはっとしたように顔を上げる。
「って、あら?!」
それを見た青柳さんが驚いたように、空いている片手で口を押さえた。
「あなた…ルーチェのハルじゃない!?」
「何やってるの!」
私のすぐ後ろから、少しの呆れと怒りが籠もった、馴染みの声がした。
振り下ろされたバットが、トモハルに触れるか触れないかの所で、ピタリと止まる。
弾かれたように振り返ると、廊下に青柳さんが仁王立ちして、ご主人を睨みつけていた。
「ふ、不法侵入だ!正当防衛だ!」
慌てたようにご主人は言うけれど、その顔にはしっかりと『しまった』と書いてある。
「馬鹿言ってんじゃないよ!どう見たって格下相手で、しかも武器もなく座り込んでいる状態じゃないの!犯罪者になりたいの!?」
ふくよかな体系の青柳さんは、廊下から出てきて、つっかけを履き庭に下りると、ドスドスと音をたてながら、停止したご主人の首根っこを掴んだ。
青柳さんとは反対に、痩せ型のご主人は、猫に捕らえられたねずみのように見える。
「全く!ひなのちゃんも居るっていうのに、ごめんなさいねぇ!どう考えたって、ひなのちゃんのお友達なのにねぇ!?」
青柳さんが、トモハルを振り返って言うのを聞きながら。
完全に人攫(さら)いのようなあの状況で、果たして友達と見えたかどうか―、こっそりご主人に同情した。
「あ、いや…」
トモハルもやっとはっとしたように顔を上げる。
「って、あら?!」
それを見た青柳さんが驚いたように、空いている片手で口を押さえた。
「あなた…ルーチェのハルじゃない!?」