いろはにほへと
そういえば。



私はトモハルの格好を見て、はたと気付く。



サングラスも、帽子も、マスクもしていない。


つまり、変装をしていない。



諸(もろ)にバレバレだ。




それよりも、青柳さんが芸能人というものを知っていた事実に驚く。



どうやら、青柳さんの家にはテレビがあるに違いない。




「きゃー!どう見たってハルだわぁっ!!握手して握手!!!」



ミーハーな反応をして、掴んでいたご主人を突き飛ばした青柳さんに対するトモハルの様子を、固唾を呑んで窺った。




「あ、どうも。ルーチェのハルです。いつもひなのがお世話になってます。」





ハルは素性を隠すでもなく、ゆっくりと起き上がると、ぺこりと頭を下げて、挨拶する。


思わずがくっとずっこけてしまいそうになった。





―何、その挨拶…





「こちらこそ!でも、まさかひなのちゃんのお友達がハルだなんて知らなかったわぁ。どうしてい言ってくれなかったのー?水臭いじゃない、ひなのちゃん!ささ、こんな所じゃなんですから、中に入ってお茶でもいかがですか?!」





息継ぎなしで繰り広げられるトークに、トモハルは一瞬気圧されたような表情をしたが、直ぐに営業スマイルに戻る。

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