いろはにほへと
コロコロコロ…
「・・・」
後ろから転がってきた小石が、私の数歩先にまで進んでパタリと止まる。
私はそれを冷たい目で一瞥して、どんどんと歩く。
コロコロコロ…
石を追い越して数歩行くと、先程と同じように、それが私の前まで転がって、止まる。
「・・・」
私は無言でそれを見つめ―
「あぁっ!!」
力の限り蹴っ飛ばし、ラッキーな事に排水溝に落とすことに成功した。
トモハルのがっかりした声など、届かない。
「なんてことするんだよー!ひなのー!」
後ろをとぼとぼと歩いていたトモハルが、咎めるような口調でそう言ってパタパタと走り寄ってきた。
「うっ!!」
私はそんなトモハルを感情のない目で睨みつけ、また目的地へと歩き出す。
トモハルは見るからにショックそうなリアクションを取っているが、それも無視。
―だって。
青柳さんの家を出て、折角詳しく話を訊こうと思ったのに。
『去年連れてってくれた蛍の見えるベンチで話すから!お願い、あそこに連れてって!』
トモハルはそれだけしか、言わなかったのだ。