いろはにほへと
しかし、強気な私の姿勢も長続きはしない。



何故なら、前方には薄暗い田んぼ道が続いているからだ。


目印の電信柱が見えてきた。



この道を、小さい頃、姫子さんと手を繋いで歩いた記憶は。


去年、トモハルに半ば強引に手を繋がれた記憶に、やや塗り潰されている。



でも、今年は誰とも繋がないんだから!一人でちゃんと行くんだから!



少しの恐怖心を振り払って、気持ちを入れ替えると、私は早足になった。



のに。





静かな畦道に、タッタッタ、と走る音が背後に迫ってくるので。




犯人はわかっているけれど、どうしてか後ろを振り向くのが怖い。


必然的に私も走ることに。





「えっ、どうしてひなのも走るのっ?!」





驚いたような声が聞こえるけど、なんかやだ。



最終的にはほぼ真っ暗な道を、息切れしながら全速力で駆け抜けた。




川の流れの音が聞こえてきた所で、私は減速し、道を曲がる。

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