いろはにほへと
「当たり前でしょう?!何が悲しくて、私のせいじゃないのに、家に帰れないんですか?!」
言葉にしてみたら、ほんとにそうだと思う。
自分は受験生で。
それなりの焦燥感もあって。
未来にも悩まなければいけないのに。
こんな所で、夢みたいな人と、立ち止まるわけにはいかないのだ。
どうせ、また、消えてしまうのに。
手を繋いでいるのもやっぱり腹立たしく思い、ぶんぶんと振りほどこうとした。
「・・・一個だけ、帰れる方法があるよ。」
そんな私の力などないものかのように、掴まれたトモハルの手は動かない。
「!なんですか!?」
打開策でもあるのだろうかと思わず籠めていた力が緩んだ。
が。
「ひなのが、PVに出てくれること」
「!!!!」
蛍から私に振り返ったトモハルの顔が、笑んでいる。
「……あの…」
一瞬、固まった私は、漸くずっと聞きたかったことを訊ねた。
「PVって…なんですか…?」