いろはにほへと

トモハルはしまった、という顔をして。


PVというものについて、なんとなく説明してくれた。




プロモーションビデオ、略してPVは、曲につける映像のこと、らしく。


内容はそれぞれだけれど、物語形式になっていることが多いようで。





「今度発表する新曲が、実は『蛍石』って曲なんだけど…」




言いながら、自然とトモハルの視線が飛び交う蛍へと向けられた。




「使うモデルが、どうもイメージと合わなくてね。俺が口出す話じゃないかもしれないんだけど、嫌なんだよねぇ。」





聞きながら、トモハルが蛍を見ながら話したいと言った理由をなんとなく理解する。




「…なんか、そんなんで煮詰まっちゃって。休みも欲しいって言ってるのにくれないマネージャーが、ふて腐る俺を見かねて言ったワケ。『あの子にきてもらえば?』って。」




矛先がどうも、自分に向いてきたようだと感づき、心拍数が上がった。





「確かにひなのはイメージにはぴったりなんだけど、、俺としては世間の目にさらすのはちょっと、ね…」





悩みどころなんだよねぇ、とトモハルが溜め息を吐いた。





< 165 / 647 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop