いろはにほへと
「…何、やってるんですか??」
見ると、トモハルが1mほど後ろで足元の一点を凝視したまま、固まっている。
「いい、いやいや、ひなの…その…へ、へっ…」
私を見返す余裕もないらしいトモハルは、何かを指差して言葉にならない言葉を発した。
「―へ?」
田舎道を照らす灯も、電球が切れているのか、チカチカと暗くなったり明るくなったりしていて。
目を凝らしても、トモハルの指し示しているモノが分からない。
益々私が不思議そうに見ていると。
「蛇っ!!」
トモハルがやっとのこと―口に出すのも嫌だというような口調で―原因を述べたので、私ははぁ、と溜め息を吐いた。
そういえば、トモハルは虫が苦手だった、と。
「蛇は、虫じゃないですけど…」
「だめだ、喰われる!俺、これ以上この道いけないっ」
呆れたように言っても、トモハルには通じないようで、首をぶんぶん振っている。