いろはにほへと
「…ほんと、仕方のない方ですね。」
少しの溜め息を吐いて、私は進んだ道を戻る。
「うわ、ひなの、それに近寄ったら危ないよっ」
かろうじて、私の身を案じてくれているらしいトモハルだが。
ちょうど、私とトモハルの間にいる、「それ」は。
「どれだけ大きいのかと思ったら…」
せめて、アオダイショウ位はあるのかと踏んでいたが。
「こんな小さいの怖くてどうするんですか?」
指の太さほどしかない、ちょろりとした蛇を指差して、私はトモハルに訊ねた。
「!?何言ってんの?目おかしいの?超でかいでしょ、それ!」
トモハルも、離れた所で指差して猛抗議。
「・・・・」
駄目だ。
人間、苦手なものは実際より数倍も大きく見えるように出来ている。
呆れを通り越し、もう何も言いたくなくなった私は、近くから木切れを探して、その蛇の腹辺りをすくい、草むらに移動させてあげた。
その間、トモハルは終始、ひぃとか、うわ、とか言ってびくびくしていた。