いろはにほへと
「え、え、あの…」
絶対的に勘違いしている早川さん。
私はしどろもどろになりつつも、上下に大きく振られる腕に身体が揺れる。
「親御さんへのご挨拶ならば、思ったら即日行うのが良い!でも今日は遅いから、また日を改めて―、明日なんかいいんじゃないかな!?ね!ご実家はどこなの!?どこに行けばご両親に会えるのかな!?」
ついていけない感じが早くも漂う。
「―ごめん、まこちゃん。」
さっき畦道を歩いていた時とは打って変わって低いトーンで、トモハルが早川さんのトークを遮った。
「ごめんって何が?別に良いって!良くなったわけだから!」
早川さんは首を振って、何かわからない懺悔に対しノープロブレムと笑っている。
「だから、ぬか喜びさせてごめんって。ひなのはやりたくないらしいんだ。」
俺の早とちりだった、と付け加え、トモハルが頭を掻いた。
「ぬか喜び?!何それ!?やりたくないって―」
まだ理解できていない早川さんはにこにこと笑んだまま、言葉に詰まった。
同時に、私の腕を取って振っていた動きも、ぴたりと止む。
「だから。ひなのはPVでないって。」
駄目だしの如くトモハルが釘を刺した所で。
「えええええええええええ!?!?!!?!?!」
漸く、早川さんの思考と理解が一致した。