いろはにほへと
「ちょ、ちょ、ちょっと待って!!!」
早川さんは、私とトモハルから勢いよく距離を開けて、両手を突き出す。
「おおお、俺の聞き間違いかもしれないから、ね、ね、念のためも、もう一回き、訊かせてくれ。今度のPVに、、彼女は参加して―?」
「くれない。」
「おおぅ!?」
きっぱりと首を振るトモハルに、早川さんは奇声を発して、突き出していた両手で頭を抱えた。
「だ、だ、だって、今の主演の子だってトモハルが断るっていうから、すっごい向こうのマネージャーからも怒られて、監督からも怒られて、散々だったのに、、い、今から代わりのなんて見つけられないよ?もっとどうでもいい女の子になっちゃうよ??ただでさえ、彼女だってど素人なんだから…」
ぶつぶつと何やら自分に言い聞かせるように呟く早川さん。
やがてがばっと顔を上げて。
「駄目!絶対駄目!そんなことしたら俺首になっちゃう!首決定に近かったんだから!君には絶対やってもらわなくちゃ駄目!」
半泣きで私を見つめる。
「い、いえ…あの…」
「俺もうすぐ父親になるのに…無職、、無職の父親…そんなんで養ってなんかいけないっ!!!」
しどろもどろになっている私に対して、早川さんがプレッシャーをかけてくる。