いろはにほへと
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「とゆーわけで。」
エプロン姿の早川さんが、神妙な面持ちで、正座をしながら私を見つめる。
前髪が目に掛かっているので、私は早川さんの目を見なくて良いので、助かる。
けれど、両膝の上に置いた、握り締められた拳が、やけに視界に入る。
「この話っ人助けだと思って、受けていただけないでしょうか!?」
「でしょうかっ!?」
早川さんの隣で、トモハルも正座して加勢している。
「・・・・」
私は返事をしないまま、目の前に広げられた料理の数々に視線を落とした。
一人暮らしが長かったという早川さん。料理は得意分野だという。
あれから何故か意気揚々とキッチンに向かって、腕によりをかけた料理を披露してくれている。
まぁ、つまりは、賄賂、袖の下と言う事だ。
けれど。
「申し訳ないんですけど…おなかいっぱいです。」
さっきまで、青柳さんのお宅で豪勢なご馳走を食べてきた所だというのに。
お腹が空くわけがない。