いろはにほへと
トモハルと、早川さんのそんな会話なんて知る由もない私は。



そのまま打ち合わせなんです、と言って、タクシーが来るまで待っていれば良いのに、という母の勧めを断り、居なくなった嵐のような二人について、両親から質問攻めにあっていて。



今までの人生の中で、一番大きな決断だったのではないかという決定に、正直自分が一番驚いていた。



積もり募った想いを抱えて。


ちゃんとしたさよならさえすれば、この気持ちはきっと居なくなるのだろうと思い込んでいて。



『将来』なんて。



全く手に付かなくて。



一年間という年月。


自分は本当にトモハルを待ち侘びていたんだ、と実感し過ぎる程に、気分が高揚していた。



それが、正しいのか、間違っているのかは知らないけれど。



進みさえすれば、いずれ終わりが見えてくることはわかっていた。



終わってしまえばあとは、ただ、元の生活に戻るだけ。



この時点では、そう、安易に考えていた。


だから。



後戻り出来ないという現実が、どれ位苦しいのかという事を―。





文字通り後になってから、嫌になる程、思い知る羽目になった。
< 194 / 647 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop