いろはにほへと
ちら、と早川さんの顔を盗み見ると、真剣な顔で真っ直ぐに監督を見つめている。




真っ赤な嘘、だろうと思うのだけれど。




「…ふーん…」




早川さんの出任せを信じたのか信じてないのか。




「じゃ、ま、とにかく内容説明して、掴んでもらって、リハから入ろうか。」




腕組みをしながら思案していた監督が、先程とは打って変わって、前向きな提案をしてきた。





「あっ…、ありがとうございます!」





あっさりと話がまとまったことに、早川さんは驚いたようで、一瞬だけ固まったが、直ぐに頭を下げた。





「俺の手にかかれば、まぁ、道端の石ころも、サファイアくらいにはなるだろ。しゃべる所はほとんど無いしな。とにかく流れを説明してやって。」





にやっと笑って歯を見せると、羽柴監督は偉そうに歩き出す。





「はいっ!ほらっ、君も!」


「うぁ...、はいっ!!!」




早川さんにせっつかれて、ふたりで監督の背中に向かってお辞儀した。




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