いろはにほへと
固まる私に、早川さんは知らないよねぇ、と頷く。



「蛍石には色んな色があるんだけど、特徴があってね。熱を加えると光るんだ。すごい綺麗だから、機会があったら調べてみると良い。ただ―」



説明しながら、テーブルの上にゆっくりと腰掛ける。



「割れて砕け散るから実際にやってみるのは、危ないからやめてね。」



「…はぁ…」




多分やらないだろうけれど、見てみたい気もする私は曖昧に頷いた。




「つまりね。」



そうやって、早川さんは鞄からファイルを取り出して、中から一枚の紙を抜く。




「今回の歌はバラード。夏だっていうのに、なんでかしんないけど、遥はバラード出したがるんだよね。もっと爽やかにしてくれたらいいのにさ。暑苦しいったらありゃしない。」




ぶつぶつ文句を言いながら、その一枚の紙を私に差し出した。




「だけど、今回の内容は、そんな砕け散っちゃう蛍石だから、花火とか使うか!ってことになってさ、まぁ夏らしいPVになるかねってことで落ち着いた訳。はい、これ持って、耳に嵌めて。」




片手で紙を受け取って、言われた通り、イヤホンを耳に嵌める。




「それが歌詞。で、これから曲を流すからよく聴いてね。」



その先についている何か、小さな機械の様なものを、早川さんがいじると、直ぐに曲が流れ始めた。



私は手に持っている紙、つまり歌詞カードを目で追う。


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