いろはにほへと
「いえ、ただ感動してしまっただけです。」
前髪で、赤くなっただろう目を隠し、首を振った。
「ふーん。ま、俺が言うのもなんだけど、遥は本当に良い曲作るからねー。で、どんな風に撮影がされるのかと言うと―」
早川さんが説明しかけた所に。
コンコンコンコンコンコンコンコンコン
「………」
やたら長いノックが響き、早川さんと私は思わず―前髪はあるけれど―顔を見合わせた。
「入りまーす!」
聞き覚えのある、明るい声に。
「遥?!」
早川さんが叫び、私の心拍数が上がる上がる。
ガチャリと勢い良く空いたドアの先。
「乙です!」
赤茶けた髪色のトモハルが、にこやかに立っていた。