いろはにほへと
「とにかく!ここには立ち入り禁止!散れ散れ!時間がないんだ。」
「えーーー!!!まこちゃんのケチぃ!」
早川さんが入ってこようとするメンバーの前に立ちはだかって、通せんぼをし、キィ君がぶーたれる。
「そんなに見たいんだったら、撮影が始まってからスタジオの隅ででも見てろ!ただでさえモデルの気が散るだろ!」
「ひど!俺等の曲なのに!」
「まぁまぁ。確かに突然過ぎたし!行こ行こ!」
本気ではないが、憤慨するキィ君の肩を、ソージが掴んで廊下に戻らせた。
「見てみろよ、政宗なんかもうあんな遠くに居るぞー」
ソージの声が響き、初めてまぁさんが忽然と姿を消していた事に気付いた。
「―で?なんでお前は残ってるワケ?」
早川さんの冷ややかな声が、静かになった室内に通る。
「え?俺は居ないと駄目でしょ?ひなのは俺が居ないときっと緊張するし、曲の説明もちゃんとしてなかったし…」
ちゃっかり残っていたトモハルが、当然でしょうと言った。
「大丈夫だ、トモハル。俺がちゃんと説明するから。」
「ええ?!」
がしっとトモハルの肩を掴むと、早川さんが、ドアの向こうに押し出す。
そうして、何やら静かに耳打ちした。
「お前とあの子が間違っても撮られてみろ。最悪だ。接触は極力避けろ。」
私は聞こえない二人のやりとりを、ただ首を傾げて見つめていた。