いろはにほへと
「本来であれば、もう発売していてもおかしくなかったのに、こんなにズレたのは、ただただトモハルの我が儘が原因でね。スタッフ総動員で一ヶ月で完成させなくちゃの強行突破だよ。ったくもう。だから、君の撮影はこの一週間で、みっちりやる。頑張って予定通り行ったら解放するから。ギャラもちゃんと払うし。」
スタイリスト、さん。
美容師さん。
メイクアップアーティスト、さん。
という人たちに囲まれて、身体中をいじられている間。
早川さんはぶつぶつとドアの向こうで話を続けた。
じゃきじゃき切られていく前髪。
知らない所の制服。
顔にもぱふぱふと色々叩かれて、息が詰まってしまいそうだ。
っていうか、高校生が、高校生役とか。
いいのか?!
いや、いいのか…。
変な疑問を覚えながらも、一週間という時間に安堵した。
胸をかき乱されるのは。
もう、これで、最後にしたい。