いろはにほへと
「早川さーん!出来たわよー!」
固まった私を余所に、お姉さま方は、部屋の外でぶつくさ呟いている早川さんを呼ぶ。
「え?!じゃ、早く出してよ!」
時間ないんだから!と続けるルーチェの敏腕(?)マネージャー。
「良いから!かーなーりー力作だから、ちゃんと見てよ!チェックも仕事の内でしょ!」
一人が、ガチャリとドアノブを掴んで回せば、早川さんが面倒そうにぶつくさ言いながら入ってきた音がした。
と、いうのは、私は鏡に釘付けだから、よく把握できていないからだ。
「あーもう!いちいち面倒だなぁ、そんな時間ないんだ…」
―あぁ、絶句されている。
漸く、鏡に映って視界に入ってきた早川さんが、私を見て固まったのがわかった。
そりゃそうだ。似合わないし、こんな平凡な顔で、こんな顔出してこんな足出して…
穴があったら入りたい。
なのに。
「ふっ…」
羞恥心で視線に耐えられず、俯いた次の瞬間。
「?」
どうしてか、鏡越しの早川さんが、不敵に笑った。
「これは…イケるかもしれない…」