いろはにほへと
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―視界が、クリア過ぎる。





スタジオまでの廊下が、すごく長く感じる。





「化けるっていうのは、こういうことを言うのかなぁ。つーか、遥の眼力はすげぇなぁ。」




早川さんが、相変わらずぶつぶつ念仏みたいに唱えているけれど。



私はと言えば、未体験の感覚に、自分が自分ではないかのように感じて、ロボットのような歩き方になっていた。


右手と右足、左手と左足が一緒に出ている。





「今回撮影するのは、学校生活の部分。主人公の男の子と一緒に教室で楽しそうに話してる所。その途中、窓から見える想い人に目を奪われてしまうっていうシーンね。あと細かいのは、廊下ですれ違うシーン、とか!」




薄い冊子のようなものを手渡されながら、早川さんの興奮が何故か伝わる。




着用している制服は、チャコールグレーのジャケットと薄い青のYシャツに、濃紺のネクタイ。ジャケットと同色のプリーツスカート。黒のハイソとローファー。
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