いろはにほへと
「おっせー…待ちくたびれた、俺帰ろうかと何度も思ったんだけど。」
黒髪で少しだけ目にかかる程度の前髪。
年は私とあまり変わらない位だと思う。
だけど。
「チッ、早く始めてよ。」
何故か、超不機嫌。
「はいはい、今から始めるから。」
羽柴監督が軽く返事をして、私から放れ、パンパンと手を叩く。
「じゃ、とりあえず時間ないから、ぶっつけで流れだけでもやってみよう!それぞれ位置についてー!」
完璧、置いてけぼりの、私。
「ったくさ、お宅のせいで、うちの桂馬がどれだけスケジュール詰めたと思ってんの。待ち時間考えて行動してくんないと困るよ。」
「いやー、申し訳ないです。本当に。」
直ぐ傍では、早川さんが、阿立桂馬のマネージャーに厭味を言われている。
―どうしよう。
頼る人、いない感じ??
「ほら!中条!早く行って!」
「はっ!はいっっ!?!?」
もう誰の声かわからないまま、煮え切らない返事をし、挙動不審になれば。
「ここだって!!!」
スタッフらしき人が、学校の教室のセットみたいな所から手招きしていた。