いろはにほへと
今日撮るシーンは、先程早川さんから説明があったように、放課後の閑散とした教室で、残っている二人が、他愛も無い会話を楽しんでいる部分。


セットの教室は、一区画とはいえ、びっくりする位よく出来ていて、見えない所まできっちり作られている。


但し壁はない。




それより。


すごい照明の数々と、大勢の人と、カメラ。


合唱コンクール以上のステージ。



頭が早くも真っ白になりそうだ。




「はい、中条、座って、そこにあるシャーペンと紙でとりあえずなんか書いてて。」



―へ?!



「うぁ、はい!」




指示された通りに、ぎくしゃくと席に着き、机の上に、無造作に置いてあった紙に、シャーペンの先を当てた。




「桂馬は教室の入り口から入ってくる所から始めてー」



あくまで主役は阿立桂馬なのだが、私は一体何を自分がしているのか分からなくなるほど、緊張していた。


嫌な汗をバンバン掻いている。


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