いろはにほへと
「はい、じゃいきまーす。」



カウントダウンと共に、桂馬が教室のドアを開ける。




『メイ!』





顔を上げるとヒロがゆっくりと近寄ってきた。





『まだ残ってたの?』




えーと、えーと、えーと…




『……ヒ、ロこそ、まだ残ってた…の?』



しまった。


若干つっかえた。


頬も引き攣る。


いつも敬語な私が、敬語をしゃべらないとか、違和感があり過ぎて、動揺が走る。




が。




『何してたの?』




とりあえずカットはされない。


まだ物語は進んで良いらしい。




桂馬が椅子に座りながら、私の手元のノートを覗き込んだ。




『ふっ…』



そしたら、さっきよりも確実に距離を縮めてきた桂馬が突然噴き出す。


私は後ずさりしそうになるのを必死で堪えた。




『何、それ。その数式の中の……コケシ???』



『なっ…』



絵心のない私は、必死で書いた今人気のキャラクターをコケにされて一瞬言葉を失った。




『違いますよっ…チェルダーマンです!』



『え、それ犬のつもり?!どうみてもコケシにしか見えねぇ…下手くそ過ぎんだろ。』




ひー、腹いてぇ。と笑い出す桂馬を腹立たしく感じながら、さっきの監督が言っていた、窓の外を見るフリをしろとの指示を思い出す。




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