いろはにほへと
「…ふーん…。」
必死で首を振り続ける私に。
「ひっ…」
トモハルから視線を戻した桂馬は演技ではない、初めての笑顔を。
但し、白くない。
真っ黒な笑顔を向けた。
「面白くなってきたね。」
―何がですかっ!?
訊きたいけれど、声が出てこない。
机の上に、両腕で頬杖を付き、口角をしっかりと上げた彼の目は冷ややかで。
「もしかして―知り合い、とか?前のモデルにダメだししたのってハルだったよねぇ?んで、今回の大抜擢?なんか裏ありそう。」
ない、何もない。
そう言いたいが、上手いこと口が回らない。
「俺、あんたにちょっと興味湧いてきたな。」
ふっと目を細めた桂馬は、直ぐに挑むような視線を向けてくる。
「改めて、この一週間、よろしくね。メイちゃん。」
私はぞくりと感じた悪寒に、身震いしそうになった。