いろはにほへと
そんなこんなで、桂馬が入った部屋が、『阿立桂馬様』と札が貼られた控え室。
ドアを閉めた所で、漸く解放された。
桂馬は中にあるソファにどかっと座り、ペットボトルのミネラルウォーターをごくごくと飲んだ。
私はと言えば、入って直ぐの場所に直立不動。
頭の中では、《この部屋の隅に大画面がある!もしかしてもしかして、あの黒びかりしているのが、俗に言うテレビって奴ですか!?》と今更だが、原始人さながらのびっくりに陥っていた。
「相思相愛…」
だから、突然響いた桂馬の声に、直ぐに反応できなかった。
ソファの背に長い腕を掛け、もう片方の手はペットボトルを握り締め。
決して優しくない視線は、私に向けられている。
「―って奴?」
続いて、ベキベキっという音と共に、桂馬の持っていた空のペットボトルがぐしゃぐしゃにへこんだ。
「へ?」
桂馬の言葉がよく聞き取れなかった私は、瞬きを繰り返す。
「あんたとハルってどーいう関係?」
やがて、気付く。
目の前の、危険人物の機嫌が、今すこぶる悪くなっていることに。
「ど、どういうって、、、別にどうもこうも…」