いろはにほへと
ガコン!
硝子のテーブルの上に叩き付けられたのは、今しがた桂馬が手にしていたくちゃくちゃのペットボトルで。
「きゃ…」
驚いてあわわと後ずさると、固いドアに背中が当たった。
「嘘だって、バレバレ。でもまぁ、いいや。その内吐かせるから。メイちゃんも、そろそろ着替えてきたら?俺も支度済ませたら、あんたの控え室の前で待ってるから。」
―どうしよう、ホントに怖いです。お父さん。
世の中の男の人は苦手。
世界で唯一許せたのは父。
それから、最近仕方なく慣れたのが、トモハル。
私にとって、その二人しか、現時点で、平気な人が居ない。
だって男の人は乱暴でこんな風に怖い。
「っ…」
無言で、ドアノブに手を回して、出ようとする私に。
「逃げんなよ?」
かけられた呪いの言葉のなんとまぁ、恐ろしいことか。