いろはにほへと

ガコン!


硝子のテーブルの上に叩き付けられたのは、今しがた桂馬が手にしていたくちゃくちゃのペットボトルで。



「きゃ…」



驚いてあわわと後ずさると、固いドアに背中が当たった。




「嘘だって、バレバレ。でもまぁ、いいや。その内吐かせるから。メイちゃんも、そろそろ着替えてきたら?俺も支度済ませたら、あんたの控え室の前で待ってるから。」




―どうしよう、ホントに怖いです。お父さん。



世の中の男の人は苦手。


世界で唯一許せたのは父。


それから、最近仕方なく慣れたのが、トモハル。



私にとって、その二人しか、現時点で、平気な人が居ない。



だって男の人は乱暴でこんな風に怖い。




「っ…」





無言で、ドアノブに手を回して、出ようとする私に。




「逃げんなよ?」




かけられた呪いの言葉のなんとまぁ、恐ろしいことか。

< 232 / 647 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop