いろはにほへと
「こ、こ、怖っ…」
出て直ぐの廊下で、それだけ小さく叫び、息を吐き出した。
「ていうか、ここはどこでしょう…」
桂馬に連れてこられるだけ連れてこられた場所。
気が動転していて、道順なんかよく見ていなかった。
「こ、こ、こっち?いや、、えっと、、、こ、こ、こっち??」
廊下でわたわたわたわたと焦る私。
前を通る人も居なくて、途方に暮れて、迷子になったような気分。
間違えたら桂馬になんて言われるかわかったものではない。
いや、その前に、間違えたら二度とこの建物から出られなくなってしまうのではないか。
悩んだ末、結局一歩も動けないで居ると、ドアが勢い良く開いて―
「ぎゃっ」
突き飛ばされた私は、床に手を着いた格好になった。
「―は?なんであんたまだそんなとこにいんの?」
恐怖男子、再来。
最早涙目になっているであろう私は、恐る恐る振り返る。
「あ、、、の……道が…」
予想通り、黒紫のオーラをぐらぐら出している桂馬が仁王立ちで立っていた。
「は?聞こえねぇ」
なんで。
なんで、私がこんな目に…。
「み、道がわからないんです!!!!」
平凡な日常がどこでどうトチ狂ってしまったのか。
いつだって元を辿れば、トモハルに行き着くのだけれど。