いろはにほへと
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数十分後。
「着替えた?」
ドアの向こうから聞こえる、相変わらず不機嫌な声に、私は小さくはい、と返事をする。
あの後、項垂れている私を見て、桂馬は呆れ顔をした後、無言で私の控え室まで案内してくれ、今に至る。
「じゃ、早く行くよ。」
どこに?!と訊きたいのだが、訊けないチキンな私。
いそいそと持ってきた鞄を持って、借りた制服をハンガーに掛けて、ノブを回せば。
「―何、それ。」
眉間に深い皺が寄ったままの彼の表情が瞬時に強張った。
「え。」
勿論、何を言われているのか分からない私は、首を傾げる。
「だっさ、それ、私服?」
「え、そ、そうですか…?」
嫌悪感丸出しに言われて、私も自分自身を眺めてみた。
上は、無地でグレーのゆったりとしたTシャツ。
下は、同じくグレーの、ジーパン。