いろはにほへと
「同系色とか…上下おそろかっつーの。つーか、その濃い化粧も落とさないの?撮影用でしょ?」



何を言われているのか、内容は理解できないが、凄く良くない、と言われているのはなんとなくわかる。




「・・・・・・・」




完全に止まった私に。




「あー、もう!ほんとにあんたって世話の焼けるっ…」



「え、は…」



痺れを切らしたらしい桂馬が、私をひっぱって、控え室にリターンした。



「ほら、座れ」



強引に鏡の前の椅子に座らせられ。



「うわっぷ」



前髪を洗濯ばさみ(お洒落な道具そうだけど、正式名称は知らない)みたいなので止められて。




「化粧ってのは、こうやって落とすわけ!」



「うあ」



桂馬はコットンを手にとって、なにやら液体をつけたかと思いきや、それを私の顔にくっつけた。




「ほら、目、閉じて」




くるくる、くるくると、滑るコットンと、桂馬の指が、私の顔の上を行ったり来たりしている。




言われたとおり目を閉じれば、ラベンダーの匂いがなんとも心地良い。

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