いろはにほへと
どうして、灰色のシャツではいけないのか。

私と歩くのが嫌なら、ひとりで帰れば良いものを。



膝の上に置いた手で、フレンチブルの顔辺りをぐしゃりと握る。



「おっせぇーな?」


「っ!」


ドアの外から聞こえた桂馬の声に、びくりと肩を震わせ。




「俺が直々に着せようか?」



恐ろしい提案に、返事をする前に即着替えた。



「いいい今出ますっ」



一時的に置いた黒の手提げを脇から慌てて取ると、急いで控え室を後にした。




「…………まぁ…それが精一杯か…」




見下したような物言いだが、言っている本人は心底そう思っているようで。


諦めにも似た溜め息を吐く。



私は悔しさで口を間一門に結び、桂馬の服装はどうなんだ!と隣を歩く彼を観察。




黒のキャップ。


上半身は、黒の七部丈を着てる上に、白っぽいリネンシャツを羽織っている。


下はオリーブブラウンのクロップドパンツ。


変装用か、黒のサングラスを着用している。


あとは、シルバーのネックレスをしてる。


指輪も角ばったのが幾つか。







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