いろはにほへと
―これは、、お洒落、というのでしょうか。
「危ない」
「わ」
色々考えていると、脇からにゅっと掌が出てきて、私の額にポン、と触れた。
「よそ見しすぎ。つーか見過ぎ。前見ろ、前。」
手の主、桂馬に言われた通りにすれば、ちょうど鉄扉が、5センチ程先に待ち受けていた。
「はっ!す、す、すいませんっ…」
縮こまって後退して、はたと気付く。
「あ、あの、、、ここ…朝入った所とは違う―」
「裏口だから。」
「あ、そ……いやいやいや、何故裏口なんですか?」
納得しかけて、思い留まる。
「色々面倒だから。」
桂馬は言いながら、ガチャリ、重たそうな鉄扉のノブを回した。
「え…それはどういう…そして、これからどうする…」
慌てて続ける私を無視して、桂馬は扉の外へ出ていってしまうので。
「えー……」
仕方なく私も後を追った。
この時、トモハルが何処にいるか、なんて考えていなくて。
むしろ桂馬に振り回されて、申し訳ないけれど、忘れていて。