いろはにほへと
アスファルトの上に降り立つと、照り返しがきつく、思わず目を細めた。
桂馬もだるそうな声で、あっちぃな、と呟いた。
「じゃーね、同級生…ちゃん?桂馬鬼だから気をつけてね。」
助手席の窓が開き、先程の拓馬がちらりと私を見て笑う。
「あ、、えと…ありがとうございました…」
鬼だということは存じ上げております、とはさすがに言えず、濁した感じで薄く笑い返した。
「桂馬も、気をつけろよ。そんな変装くらいじゃ軽く見破られちゃうから。」
「わーってるよ。」
気のない返事で桂馬はそう言って、しっしと行くように手を振る。
「ひでー弟。」
拓馬はハハハと愉快そうに言ってから、車を発進させた。
「さて、と。」
私はそれを名残惜しく見送り。
「行きますか。メイちゃん?」
桂馬の恐ろしい程乾いた笑いに、ごくりと生唾を呑みこんだ。