いろはにほへと
図書館は、建てられてから日が浅いのか、とても綺麗で近代的な造りになっていた。


そして、何しろ大きい。


5階建てなのだが、ワンフロアが広々と取ってあり、本の種類によって分けられている。入って直ぐは吹き抜けで、3階から上は会議室や多目的ホールのようだ。





ソファや椅子も沢山設けられており、夏休みのせいか、多くの人で賑わっていた。



「広い…」



桂馬の隣をやや離れ気味に歩きながら、本の多さにうっとりした。



「でしょ。ここらでは一番でかい。」


「あ、私あの、ちょっと数学の本を…」



うずうずして、桂馬の脇を通り越していこうとしたのだが。



「ダメ。あんた何考えてんの。あんたに必要なのはこっち」



「うわ」



手首をぐっと引かれ、2階へと続く階段を上らされる。



桂馬が一体何をしようとしているのかよくわからなかったけれど、なんとなく演技について頑張って教えてくれようとしているのかな、という結論に達しそうな私。


抵抗するのも反抗するのもやめて―今までだってしていなかったけれど、というか何をしても無駄だったけれど―割と大人しく付いていくことにした。
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