いろはにほへと
が。
「これとこれとこれと」
ドサドサドサっと私の腕の上に積んでいかれたのは。
「ろ、ロミオとジュリエット―?」
がっつりな恋愛系物ばかり。
「あとこれとこれとこれと」
「ちょ、ちょっと待ってください!!」
「何?なんか文句ある?」
怪訝な顔して問われ、一瞬だけ躊躇うけれど、意を決して口を開いた。
「私これどれも読んだことがあります!」
「え?」
目を丸くして固まったのは、桂馬の方だ。
いや、多分、だけど。
実際はサングラスかけているので判りかねる。
「だから、私これ全部読んだことがあるので、大丈夫です。頭の中には入っています。」
積まれた本の重さに耐えかね、ぐらぐらする自分を何とか支えた。
「マジ?」
驚いたような声で、桂馬は考え込むように顎に手を当てる。
「じゃ、何であんたはあの曲の流れや意図がわかんないわけ?」
「なっ…どういうことですかっ!?」
「あ、そうか」
直ぐに自己解決した桂馬が、軽く手を叩いた。
「男の側の気持ちだからか。」